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2024-05-09
ノー・マンズ・ランド 閾(しきい) 敷居
権力の空間/空間の権力 個人と国家の〈あいだ〉を設計せよ (講談社選書メチエ)
作者:山本 理顕
講談社
Amazon
2024年05月09日
そして誰かがいなくなる 下村敦史(中央公論新社)
クリスティの『そして誰もいなくなった』を本歌取りした作品はこれまでに数多く出版されている。以前、調べた限りでは国内で、この作品をリスペクトしたタイトルの小説は30冊近くもあり、ミステリに限って言うと15冊を越えている。
本家の『そして誰もいなくなった』は、孤島に集められた10人が次々と殺されていき、最後に生存者が誰も残らないという内容で、クリスティの作品、いやミステリ黄金期の作品の中でも一二を争う衝撃的な作品だろう。このあらすじだけを今の若い人が読むと、どんなに残虐な殺され方をするホラーなんだろうと思うかもしれないが、そういうホラーテイストのところは一切無い。あくまで孤島という閉鎖的な空間で、人が次々に、それも童謡の見立てどおりに死んでいくという設定の怖さと、追い詰められた人間どうしの心理的な葛藤とを、誇張することなく坦々と描いていく。一級のスリラーと言ってもいいが、クリスティらしく本格ミステリとしてのトリックも最後にちゃんと解き明かされる。
これが、いわゆる「クローズドサークル」だとか「嵐の山荘」などという一つのジャンルを生み出すほど、その後のミステリ作家に影響を与えた。とりわけ、本格ミステリやホラーなどが全盛の日本では数限りない亜流の作品が作られた事は間違いない。ただ、タイトルを真似るという事は、クリスティの作品を踏まえて新たな趣向を披露するという心づもりが、著者にあるという事だろう。本作は一体どんな「心づもり」があるのだろうか。さきほどのリストを見渡すと、夏樹静子の『そして誰かいなくなった』とも非常に似ているので、もしかするとこちらを踏まえている作品なのかもしれない。いずれにしても「誰か」と言うからには、本家のように片っ端から人が殺される連続殺人事件ではないようだ。登場人物の中の一人か二人が「殺された」かはともかくとして「いなくなる」。それが「誰」なのかが他の人には分からないという事だろうか。もし、そうなら、それこそ超絶技巧だろう。一緒にいながらもいなくなった事に気づけないなんて、どうやったら実現できるというのか。
そんな妄想を抱いて読んだわけだが、結果的にそういう作品ではなかった。いや、最後までタイトルの意味にピンとこなかった。クリスティのタイトルは「誰もいなくなる」という状況が進行していって、最後に「そして…いなくなった」という状況が完結する。まさしくタイトルが内容そのものだ。しかし、本書での「誰かいなくなる」という状況は、はなはだ曖昧なままに登場人物にも読者にも共有されていくので、タイトルが腑に落ちたという瞬間は、最後まで訪れなかった。
最後まで訪れなかったと言えば、本書の謎解きについても、なし崩し的に探偵が謎解きを始め、そしてこれまた他の登場人物(多くはミステリ作家)と読
江口雄輔 『十蘭逍遙』
「十蘭のインターナショナリズムについてはよく語られるが、彼の念頭にあるのは、超国家的な統一世界を想定したいわゆるコスモポリタニズムではないし、脱国家的な単なるデラシネの世界でもない。ナショナルなものが、いわばモザイク状に並存し、しかもその境界は固着せずに揺らいでいる、そんな世界だ。」
(江口雄輔 『十蘭逍遙』 より)
江口雄輔
『十蘭逍遙』
国書刊行会
2023年11月20日 初版第1刷印刷
2023年11月22日 初版第1刷発行
315p+1p 口絵(モノクロ)4p
四六判 丸背紙装上製本 カバー
定価:本体2,700円+税
装丁:岡本洋平(岡本デザイン室)
装画:西山彰「銚子海岸に佇む久生十蘭像」(木版画)
本書「あとがき」より:
「本書の第Ⅰ部は、拙著『久生十蘭』(白水社、一九九四)をもとに、大幅な加筆をして、一部章立てを変えたりあらたな章をもうけたりし、また全体的にも必要な加筆を行った。第Ⅱ部は「水の物語」(『早稲田文学』 一九八七・三、所収)、と「清原啓子の十蘭」(『清原啓子作品集 増補新版』 阿部出版、二〇一七、所収)に加筆したものである。」
本書付記:
「本書の収録内容は左記のとおり。
第Ⅰ部
『久生十蘭』(白水社、一九九四・一)に基づき、以下の大幅な増補改訂を行った。
「スタンダールに学ぶ」→同書「阿部正雄と久生十蘭」に加筆し、独立した別章とした。
「「金狼」とピエール・マッコルラン「真夜中の伝統」」→同書未収録。初出『学苑』(昭和女子大学紀要、二〇一四・五)に加筆した。
「戦争と十蘭」→書き下ろし。
第Ⅱ部
「水の物語」(『早稲田文学』 一九八七・三)、「清原啓子の十蘭」(『清原啓子作品集 増補新版』阿部出版、二〇一七・十一)に基づき、加筆した。
第Ⅲ部
『定本久生十蘭全集』別巻(国書刊行会、二〇一三・二)所収の年譜に基づき、増補改訂した。」
年譜は二段組。口絵として写真図版(モノクロ)4点。本文中に写真図版(モノクロ)8点、清原啓子の銅版画作品図版(モノクロ)4点。「清原啓子の十蘭」に清原の詩「孤島」「魔都霧譚」附載(二段組)。
久生十蘭評伝+関連エッセイ二篇。旧著も持っていますがせっかくなので増補改訂版もよんでみました。旧著で手薄だった部分が肉付けされて読み応えが増しています。「水」のテーマに関しても今回Ⅱで詳しく論じられていて、そこでは十蘭における〈水〉と〈肉親の愛〉と〈十〉のテーマが強調されていますが、しかしそれをいうなら世界最古の小説『源氏物語』(「宇治十帖」)のテーマもそうです。
個人的には、旧著の掉尾、「世界短編小説コンクール」入選作「母子像」の仏語訳の印税が振り込まれたフランスの銀行の「マサオ・アベ名義の口座が、いまなおありえない主人の訪問を待って残されているかもしれない」という印象的な一文が、「あり
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エリック・ジマーマン『遊びと創造』(高崎拓哉訳、BNN)
東工大に着任して4年目になりました
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澤直哉『架空線』(港の人)書評
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感情レヴュー
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蟹亭奇譚
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kokada_jnetの日記(50代病人夫婦の日記)
2024-03-26
急性離人症、発症
本日の夕方、年度末で、仕事が異常にたまっているところに、プライベートでも、仕事関係でも、問題がつづいて。
某ユニオンの会議にででいたら、急性離人症になったようだ。
とにかく、現実感がなく。自分自身が、本人の感じがしない。
パワハラ職場で、上司から怒られまくっている人が、同じようなことになっていそう。
辛い体験だったが。
でも、フィリップ・K・ディックの小説の主人公の気持ちが、すこしわかったようで。
kokada_jnet 2024-03-26 01:17 読者になる
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急性離人症、発症
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2024 / 3
qfwfqの水に流して Una pietra sopra
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m-sakane’s diary
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「ナイトランド・クォータリー・タイムス」issue15内容紹介
July 01, 2022
マンガ単行本 価格の謎
先日書店で以下の三点を見つけて、やったね、と喜んで買ってきたわけですが。
●高松美咲『スキップとローファー』7巻(2022年講談社、680円+税、amazon)
●山下和美『ツイステッド・シスターズ』2巻(2022年講談社、650円+税、amazon)
●泰三子『ハコヅメ』21巻(2022年講談社、660円+税、amazon)
いずれも楽しく読みました。が、以前から気になってたのがこの価格。この微妙な値段の違いはなんだろう。
出版関係の方にはアタリマエのことなのかもしれませんが、消費者としてはよくわからない。もちろん、でかい本は高い。ページ数が多くなると高い。装丁やデザインに凝ると高い。そして少部数の本は高くなる。こういうことはわかってますが、同時期に刊行された同じ出版社の同じB6判のマンガ単行本でこの差をつけてある理由は。
単純にページ数によるものかと思いましたが、これが違う。
『スキップとローファー』と『ツイステッド・シスターズ』を比較しますと、紙は同じものを使っているみたい。そして前者は176ページ、144グラムで680円。後者は192ページ、158グラムで650円。なんと、ページ数が多いほうが、安い。ページ単価は3.8円対3.4円。なぜかベテラン作家山下和美の方がお安くなっております。
さらに『ハコヅメ』はもっと特殊で、160ページ、169グラムで660円。これでも本の厚さは前二者と同じくらいです。触った感じでわかりますが、紙が厚い。だから本が重い。ページ単価は4.1円で格段にお高くなっています。
おそらく、もっとも発行部数が多いのは『ハコヅメ』。以下はわたしの邪推になるかもしれません。少部数の本が高くなるのは当然です。しかしベストセラーが安く設定されているわけではないらしい。むしろ、ページ単価を高く設定して、出版社は少しでも多く収入を得ようとしてるのじゃないかしら。
つまり、売れるマンガは努力しなくても売れるからページ単価を高くして出版社の収支に寄与してもらう。そうじゃない作品はページ単価を安くしてお得感を出して、販売促進につなげたい。
ちなみにわたし自身がもっともページ単価が安いと思ってるのがこれ。
●石森章太郎『サイボーグ009』1巻(1966年秋田書店サンデー・コミックス、当時220円、今は490円+税、amazon)
新書判コミックス黎明期のベストセラーにしてロングセラー。なんと今も現役、新刊で入所可能です。秋田書店すげー。この1巻は302ページで1966年の発行時に220円。当時としても納得のお値段でした。ページ単価は0.73円。新書判コミックスの発売が開始されてから、マンガのコレクター、そしてオタクが誕生したのです。
そして現在もっともページ単価の高いマンガはきっとこれです。
●エイド
2014年10月より、ブログの移転を(手作業で)はじめています。 新しいブログはこちら。http://nina313.hatenablog.com/
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〓@船。美しいスクーナー帆船です。ミッキーとシャスタはこれに乗って、遠くへ連れて行かれた。この船は〈かれら〉による、ベトナム地域からのヘロインの輸送にも使われています。ヘロインの事業をマネージしている一人が、図の右上の、クロッカー・フェンウェイ。(その娘のジャポニカは家出の常習犯で、過去にドックは、フェンウェイからの依頼で彼女を連れ戻したことがある。)
〓A歯科医師の団体が税金逃れのために起ち上げたとされるオフィス。ドックとシャスタのシックスティーズの想い出の場所は、この時代、Golden Fang の建物──すごいですよ、金の牙の形をした巨大なビル──に変わってしまいました。その中ではコカイン狂いの歯科医ブラッドノイドが、女の尻を追っている。ヘロイン中毒患者は歯がボロボロになるので、歯医者のお得意さん──ということで、歯科医とヘロイン密輸は、Golden Fang のシンボルでつながる。
〓B後から分かるのですが、洗脳施設クリスキロドンは、ギリシャ語で「金の牙」の意味なのだそうです。
〈チェンネル・ヴュー〉の建設地に向かうドック。隣りにある〈チック・プラネッツ〉のマッサージ嬢でアジア系のジェイド[Hong Chau]と金髪白人のバンビ[Shannon Collis]と話した後、オートバイの轟音が聞こえて、ドックはいきなり何者かに殴られ失神した。気がつくとロス市警の〓〓ビッグフット〓<rョルンセンがいる。ここで殺人事件があった。袋に入った死体はグレン・チャーロック。殺しの嫌疑をかけれらたドックは、市警の建物から友人のオタク弁護士ソンチョ[Benicio Del Toro]への電話を許される。ビョルンセンはドックから捜査のネタを仕入れられると踏んで彼を釈放する。
司法省の船で調査してきたソンチョがドックの家にやってきて言うには、高級スクーナー船〈黄金の牙〉号が浮かんでいた海域から引き揚げられた陸軍のコンテナから、大量のドル札が発見された。それは「ニクソン」の顔が刷られた、北爆と同時にベトナムで捲かれたという代物である。夕刻、ペニーの家でドックがテレビを見ていると、右翼の団体である〈カリフォルニアの光る目〉の大会がニクソンが挨拶をして、それを口汚く野次るヒッピーの姿が大写しになる。ペニーはその男を検察への情報提供者〓〓チャッキー〓≠ニして認識するが、それはまさしく死んだはずのコーイ・ハーリゲンだった。当局はメディアとつるんで、ヒッピーの評判を貶める目的でコーイを利用していたのか。(第8章)
以上が『LAヴァイス』の、映画前半部の大筋です。予告編でフィーチャーされている〓〓ビッグフット〓≠フ日本料理店でのコミックな発声、「チョットォ、ケニチロー、ドウゾォ、モットォ、パンケークゥ」は小説の13章。もう一人の美女トリリウムの相談を受けて、ドックがラスヴェガスを動き回る
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