幻想と抒情 フリオ・コルタサル『遊戯の終わり』
フリオ・コルタサル『遊戯の終わり』(木村榮一訳 岩波文庫)は、アルゼンチンの作家コルタサル(1914-1984)の短篇集です。どれも短いのですが、硬質な文体で語られる物語は幻想的でありながら、確固とした存在感がありますね。
「続いている公園」
農場主の男は、その小説を二、三日前に読みだしていました。やがて物語に夢中になります。物語の中では、男が愛人
四月の靄、図書室
わたしが通っていた小学校は、母も同じ校舎にいたことがある木造だった。中学年に上がった頃に建替が終わったが、もともと図書室は木造校舎の方にあった。階段の手すりは幾千の小学生が滑り降り、また登る時に使ったために滑らかでうっすら光ってさえいた。二階の踊り場から向かって左にあったと思う。...