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もどきの部屋 education, sociology, history
●09/29 02:19
2024-09-262巻〈研究編〉第2章「〈教育的〉の公的認定と機会均等のパラドックス」――田中萬年先生への14年越しの卒論提出さて、『公教育の再編と子どもの福祉』【全2巻】合評会(9月29日10時~書評会申し込み_多様な教育機会を考える会出版刊行記念@日本大学文理学部)の予習用と題した連続エントリも今日で4回目、これでとりあえず打ち止めにする予定です。今日は2巻〈研究編〉の第2章として寄稿した論文「〈教育的〉の公的認定と機会均等のパラドックス――佐々木輝雄の「教育の機会均等」論から「多様な教育機会」を考える」の執筆者(=自分)への3つの質問に対する回答文です。このブログを「佐々木輝雄」で検索してもらうと16個のエントリがヒットするはずです。それぐらい多く言及してきた人物です。そのいちばん最初の日付はじつに2010年6月23日です(佐々木輝雄と「教育の機会均等」・序 - もどきの部屋 education, sociology, history)。そこに書いてあるとおり、田中萬年先生から、ほんとにただの(=「無料」と二重の意味で)ご厚意で『佐々木輝雄職業教育論集』【全3巻】(多摩出版,1987年)を送っていただいたのが最初でした。また、佐々木輝雄が1974年に日本教育学会の『教育学研究』に投稿して不掲載のまま終わった投稿論文「教育刷新委員会第13回建議の『教育の機会均等』概念について――第3項建議を中心に」の本文とその周辺資料を編纂した私家版の資料集もこのときあわせて送っていただきました。この論文は14年前の田中萬年先生のご厚意に応えようとした、現時点での私の「卒業論文」です。長く、佐々木輝雄の言ってる(書いてる)ことはほとんど何もわからない状態が続きました。あまりにも時間がかかり過ぎたので、これがふつうの大学だったらとっくに放校処分になっているところですが、なんとか自分なりの答えを出しました。ご笑覧いただけたらうれしいです。①この論文で取り組んだのは、どのような課題ですか?この論文では、佐々木輝雄という研究者が論じた「教育の機会均等」論を解読する作業を行いました。佐々木輝雄は1938年生まれで1985年に47歳で死去した研究者で、職業教育・訓練論を専門とし、1968年から1985年に死去するまで職業訓練大学校に在籍しました。この人が1975年と76年の2年間に「教育の機会均等」を主題とする論文を集中的に書いています。その内容は、戦後直後の占領期に内閣総理大臣の諮問機関として戦後教育改革の重要事項を調査審議した教育刷新委員会が行ったある建議――第13回建議「労働者に対する社会教育」――に注目し、建議に至る審議過程で交わされた議論のなかに「二つの異質な「教育の機会均等」概念」とその「対立」を見出すものです。佐々木はこの「二つの異質な「教育の機会均等」概念」に、「学校教育制度内/学校制度外」とか、「組織志向/個々の教育行為志向」とか、「制度的整合性/非整合性」とか名称を与えます(が、これらはすべて同じ「二つの異質な「教育の機会均等」概念」の区別を言い換えたものです)。そして、もしわれわれが「教育の機会均等」の実質的かつ完全な実現を追い求めるなら、この「二つの異質な「教育の機会均等」概念」のあいだにある「対立を発展させる」ことが必要だと述べます。いいかえると、「教育の機会均等」の実質的な保障は、この相対立する「二つの異質な「教育の機会均等」概念」を同時に追求するという「パラドックス」のもとでしか実現しえない、と主張します。私は以前から佐々木による「教育の機会均等」論は重要そうだと直感しながら、「二つの異質な「教育の機会均等」概念」を同時に追求する「パラドックス」というのが一体どういうことを指すのか、なぜ「教育の機会均等」の実質的な保障は「パラドックス」のもとでしかなされえないといえるのか、そして、もしそれが本当に「パラドックス」であるならそもそも「教育の機会均等」というのは実現不可能な理想でしかないのか、等々といった疑問を解消できずにいました。今回の論文は、この疑問に答えを与えるものです。②その課題に対して与えた回答は、どのようなものですか?回答はつぎの2つのステップにわかれます。まず、佐々木の述べる「「教育の機会均等」のパラドックス」とはいかなる事態を指すのか、つぎに、「教育の機会均等」は実現不可能な理念でしかないのか、実現可能なのだとしたらそれはいかにしてか、という手順で答えました。われわれが社会にある何らかの問題の解決を試みようとするとき、あるいは、人びとのより望ましい生のあり方を追求しようとするとき、準拠しなければならない理念や正義が二つ(複数)あり、そのいずれも追求しなければならないが、同時に、

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