異形アンテナ
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▽空の洪水●08/19 00:39 春名トモコ2020年8月18日 (火)
コウヒ(珈琲の超短編)
夜は、山から伸びる送電線を伝ってやって来る。だから送電線にロープをかければ、そこから夜が滴り落ちるはずだ。私たちは器を置き、期待を胸に一晩待った。
きっかけは都会から帰った兄の土産話だった。都には「コウヒ」という飲み物があるらしい。
「真っ黒なんだ。きっと夜を煮詰めて作るんだよ。その証拠に表面に白い液を流し込み、天の川を描いてから飲むのさ」
兄の話は驚くことばかりだ。広場に集まった村の住人は、夢中になって聞き入った。
「すごく苦いのを我慢して飲み干すと、時間差でコウヒが体中に広がっていく。無数の星が目玉の裏で瞬いて、体の境目が溶けて夜と一体化するんだ。あんな感覚初めてだよ」
想像ができなかった。兄の表情を見る限りそれは素晴らしい体験のようだ。私たちは是非ともコウヒが飲みたくなった。だが、作り方が分からない。どうやって夜を液体にするのだろ
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