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囚われた魚 1 投稿者:研太郎 (6月2日(月)17時32分44秒)
西島清人。
その名は、不世出のバタフライ選手として世界の水泳界に響き渡っていた。
身長185センチ、体重75キロ、胸囲110センチ。
見事な逆三角形のフォルムはまさに神が与えた彫刻のようだった。
鍛え抜かれた筋肉は隆起し、水を含んだような光沢を放ち、
見る者を惹きつけた。
精悍な容貌には、若さゆえの荒々しさと、頂点を目指す者の強い意志が宿る。
引き締まった顎のラインと鋭い眼光は、
まるで獲物を狙う猛禽のようでもあった。
世界選手権の舞台。
夏の陽射しや蝉の声とは無縁の東京アクアティクスセンター。
観衆の視線は、一点集中で清人の肉体にくぎ付けだった。
水しぶきを上げ、しなやかに水を掻くたびに、
彼の背中の広背筋が力強く波打ち、大理石のような肌の上を水滴が滑り落ちる。
逆三角形の美しいフォルムは、水中で躍動するたびに、
その均整の取れた美しさを惜しげもなく披露した。
その肌を滑り落ちる光る汗は、努力の結晶であり、彼自身の生命の輝きでもあった。
水着の隙間から、彼という男の根源的な力を象徴するかのように、
股間の膨らみが確かに主張し、会場に渦巻く熱気と興奮をさらに煽る。
競技の行方よりも、清人の放つ圧倒的な存在感、人間離れした肉体の美しさに、
観衆は理性では抗えないほどに魅せられていた。
湧き上がる歓声は、彼が水中で見せる力強くも優雅な泳ぎへの賛辞であり、
同時に、彼の肉体的な魅力に抗えない、本能的な感情の爆発でもあった。
耳朶を打つシャッター音、追いかけるカメラのレンズは、
その一挙手一投足を、その汗の一滴、筋肉の震えまでも捉えようと必死に追いすがる。
清人は、その全てを飲み込み、まるで深海の底に沈んだ宝物を探し求めるかのように、
ただひたすらに、己の限界を超えようと泳ぎ続けていた。
彼の内面では、水と一体になり、重力から解き放たれたような自由と、
途方もない視線の圧力に押し潰されそうな感覚が、複雑に絡み合っていた。
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