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ネット小説アニス編 「パンドラ様に聞いてみよう」
ファンの皆様、お待たせしました。
ギャラクシーエンジェルIの際にも行われたあのWEB連載小説シリーズが、ギャラクシーエンジェルIIになって再び登場♪
今回ももちろん月曜から金曜まで毎日更新なので、必ず毎日チェックしてね!
それではWEB連載小説第2弾アニス編、始まりですっ!
■第16回 (2006.3.16)
なんだ、この心にぽっかり穴が開いたような気持ちは……。
「かもしれまへんな。何年前まで戻ったかもわからしまへんし、下手すりゃ、生まれる前まで戻っとることもあるしな」
「おい、生まれる前ってどういうことだ」
俺は、テーブルを激しく叩きつけながら、怒鳴った。
「言ったまんまの意味やで、存在自体がのうなったってこっちゃろ」
存在自体が……消えた?
この場からいなくなっただけじゃなく、もう二度と会えないってのか?
リコが嬉しそうに、笑いかけてくることも。
リリィがくそまじめに、手合わせを挑みにくることも。
ナノが馬鹿みたいに、じゃれてくることも。
そういうの全部なくなっちまうっていうのか……?
そんな……。
そんなのは絶対に嫌だ!!
「おい、なんとかなんねぇのかよ」
俺は箱に掴みかかった。
あいつらがいなくなるなんて、考えられねぇよ。
「なんとかねぇ……それを願いにするんやったら、どうにかならんこともないけど」
「だったら、どうにかしろ! 今すぐに! 俺の願いなんてくれてやる!」
言いながら、俺は箱をぶんぶん揺らした。
箱は苦しそうに蓋をかぱかぱと開けている。
「あ~もう、何熱くなってまんのや、振り回さんといてぇな! だいたい所詮他人のことやないかい」
「人ごとなんかじゃない! あいつらは俺の大切な仲間だ!!」
そう、言ってしまって。
誰よりも俺自身が驚いた。
仲間だってことに実感がなかったわけじゃない。
仲間と言われて嬉しいことだってあった。
でも、まさか、こんなに大切だったなんて思いもしなかった。
絶対失いたくない。
今は素直にそう思う。
「俺の願いはあいつらを助けること。叶えてくれるよな」
俺は箱をテーブルの上に置き、静かに言った。
・・・つづく
■第17回 (2006.3.17)
「おう、ほんなら、その願い叶え……」
「あーーーーーーっ、蓋が開いてるですにーーーーーーーっ」
声とともに、何かが俺の背中に激突した。
「あらあら~ミモちゃん待ってください~」
振り返ってみると、そこにいたのはカルーア・マジョラムだった。
こいつも、ルーンエンジェル隊の一員。
長身で色白、華奢な体型にさらさらの金髪、と容姿はモデルなみ。
口調からも想像がつくように、のんびりした性格をしている。
そして、これが今一番重要なことだが、こいつはノイエ独自の技術である『魔法』を使える、魔女なんだ。
こいつなら、箱のこと、もっと知っているかもしれない。
「とりあえず、ふさぐですに」
「あー、馬鹿、こらやめてんかっ」
ふと見ると、カルーアの使い魔が箱の上に乗っていた。
使い魔の名前はミモレット。
手足のない、黒猫のような姿で、いつもふわふわと宙に浮いている変わった生き物だ。
その使い魔がどうして、箱をふさぐんだ?
ていうか、今それをふさがれたら困るんだよ。
俺の願いを叶えてもらわなきゃならねえんだ。
リコたちを助ける為に……!
「むー、んー、んっんーやめってってゆうてるがなっ! むぐぐ……!」
ミモレットに乗っかられて、箱はじたばたともがいている。
「邪魔だ」
俺はミモレットを箱からどかせた。
「何するんですにー」
「ぷはー、ひどい目におうたわ、ん? あんさんは、わいを封印した姉ちゃんやないか」
「正確には~、私ではないんですけど、間違ってはないですね~」
って、ことは封印したのはテキーラだな……。
なるほどね。
あいつなら、「開けちゃいやん」なんて、ふざけたこと書きそうだもんな。
カルーアは二重人格で、酒の匂いをかぐと、テキーラに変身してしまう。
髪の色が赤くなり、軽くウェーブがかかるんだ。
人格だって、正反対になる。
テキーラの方が、すばやく、そして攻撃的だ。
しかし、あいつが封印したものとなると、やっぱりろくでもないものなんだな。
「あら~タロットですわね~」
カルーアがカードを持とうとしていた。
「そいつに触れるなっ」
俺はカルーアからカードを奪い取ると、箱の中に放り込んだ。
これ以上、犠牲者は増やすわけにいかない。
「それのせいで、リコたちは消えたんだ。この上お前にまで何かあったら」
「あらあら~、もう悪さしてしまったんですね~、それでは~」
言って、カルーアが箱にシールのようなものを貼り付けた。
「お…おい、何を……」
「あけちゃ…い…や。はーと」
言いながら、きゅっきゅっとペンで何かを書き込んだ。
「はい。もう大丈夫ですよ~」
カルーアは、俺に笑顔を向ける。
「大丈夫って一体何が大丈夫なんだ?」
俺はそれに笑顔をかえすことはできなかった。
カルーアが何をしたのか……。
まさか、箱を……。
・・・つづく
■第18回 (2006.3.20)
「封印しましたので~、もう悪さはできませんわ~」
「……!!」
やっぱり!
けれど、そしたら、あいつらを助けられねぇじゃねぇか。
「それよこせ!」
俺はカルーアから箱を奪い取り、張られたシールをはがそうとした。
「もう、かかわらない方がいいですよ~」
カルーアがおずおずと声をかけてくるが、やめるわけにはいかない。
封印をとかなくちゃ!
それで俺の願いを叶えてもらうんだ!
リコたちを、元に……!
しかし、封印の札は、どんなに爪をたててもはがれない。
「この、パンドラボックスは~次々に悪い占いを的中させて、最後の最後に所有者の願いを叶えるのですが~、その瞬間に、所有者の幸運を全部吸い取ってしまうという~、悪魔の箱で~……アニスさん~聞いてます?」
箱の封印を解こうと俺がやっきになっているなか、カルーアは淡々説明を続けていた。
「あ? なんだよ、今それどころじゃないんだよ、このシールをはがさねぇと!」
「あの~、あと五年は封印が解けませんよ~」
「五年……なんでそんなにかかんだよ。俺は今開けねぇといけねぇんだ! なんとかならねぇか」
俺はカルーアに詰め寄った。
すると、カルーアは頬に手を当てて、考え出した。
「う~~~~ん。」
何かいいアイディアがあるかもしれない。
そう、期待した。
けれど、返ってきたのは
「無理ですね~~~~」
いつもの緊張感のない声だった。
「嘘だろ、おい」
俺は崩れ落ちるように、ひざをついた。
俺が箱の鍵を開けなければ……
封印の札をはがさなければ……
あの時、リコがカードを引く前に、ナノを助けたいって願っていれば……
俺のせいだ。
俺のせいでみんなが……
胸の奥から熱いものがこみ上げていた。
涙で霞んで前が見えない。
どれだけ、泣いても。
涙で頬が濡れても、あいつらは帰ってこない。
・・・つづく
■第19回 (2006.3.22)
「どうされたんですか~」
膝をかかえうずくまる俺の肩に手をそえて、カルーアが心配そうな目を向ける。
「えっく、みんな……みんなが……俺がもっと早く言っていれば……」
そうすれば、助けられたのに……
残っているのはこいつだけだ。
そう、カルーアだけ。
俺は振り向いて、カルーアの肩をがっちりと掴んだ。
「カルーア! お前だけは俺が守ってやる。絶対消させたりしないからな!!」
「え~と~、事情がわからないのですが~」
しかし、カルーアは俺の決心の意味がわからずに、困った顔をしている。
「リコも、ナノも、リリィも消えちまったんだ。みんな助けられなかった……」
だから、せめてお前だけでも。
「よくはわかりませんが~、アニスさんはリコちゃん達が大好きなんですね~」
カルーアが何かを納得したように、微笑んだ。
「ああ、そうさ俺はあいつらが、大好きだ」
俺はきっぱりと言い切った。
「そうですか~」
カルーアは嬉しそうに頷くと、すっくと立ち上がり、俺の手を掴んだ。
「それでは~、行きましょうか~」
「行くって、どこへ?」
「はい、こっちですよ~」
カルーアは俺の腕をひっぱって、強引にティーラウンジから連れ出した。
やってきたのは展望公園だった。
季節の花々が咲き、草木が生い茂る憩いの場。
そこに――
「親分遅いのだ」
ナノが俺を待っていた。
「スペースは開けておいたぞ、ここに座れ」
リリィもいる。
「今、お茶をいれますね」
リコも無事だった。
気のせいなんかでも、目の錯覚でもない。
三人は、今、目の前にいる。
俺……夢でも見ているのか?
「一体どういうことなんだ? ご破算カードのせいでみんな消えちまったんじゃねぇのか?」
・・・つづく
■第20回 (2006.3.23)
「ごは…さん? どんな人なのだー?」
ナノがわけのわからないことを言う。
「人じゃねぇよ、クレーンでひっかかったナノを助ける為にリコが箱からひいたカードだろ……」
「箱? なんのことですか?」
リコは不思議そうな顔で首を傾げている。
「覚えてないのか?」
俺の困惑をさっしたのか、カルーアが説明を始める。
「ご破算カードは~、カードを使った人が、パンドラボックスと出会わなかったことになるカードなんですよ~」
そういや、箱の奴、出会う前に戻るとかって言っていたよな。
それって、俺のことじゃなく、箱との出会いのことだったのか。
そうか、そういうことか……。
それじゃあ、覚えてなくて当然だよな。
本当に、みんな無事なんだ。
「よかった……本当によかった……」
俺はへなへなと、その場に座り込んだ。
「どうした? アジート少尉。そんな場所では弁当に手がとどかんぞ。もっとこっちに来たらどうだ?」
俺の気も知らずに、リリィがおにぎりを片手に手招きをした。
その平和な空気に、俺の涙腺が再びゆるむ。
「親分泣いてるのだ? どこか痛いのだ?」
ナノが駆け寄ってくる。
俺が怪我でもしていたら、治そうとでも思ったのだろう。
ったく、なんて親分想いの子分なんだ。
「そんなんじゃねぇよ、バーカ!」
俺は涙をぬぐいながら笑って見せた。
「あの、何かあったのなら、遠慮なく言ってくださいね。ひとりで悩んじゃだめですよ」
リコが俺の右手を握りながら、真剣に語りかける。
その手からは、体温とともに暖かい気持ちまで伝わってくるようだった。
「大丈夫、ちょっと悪い夢を見ていただけだよ。お前らの顔見たら忘れちまったさ」
「うふふ、アニスさんはみなさんが大好きなんですよね~」
俺はさっきカルーアの前で、断言した事を思いだし、ものすごく恥ずかしくなった。
「ば、ばか、うるせぇ」
「あらあら、照れてますのね~」
カルーアがからかってきた。
俺は顔を真っ赤にしてそっぽを向く。
「私もアニスさん好きですよ」
そんな俺にリコが微笑む。
「うむ、好感がもてるな」
リリィも、こくりと頷いた。
「ナノナノも親分だいだいだ~~い好きなのだーーーーっ」
そして、ナノはぴょーんっと、抱きついてきた。
・・・つづく
■第21回 (2006.3.24)
「バカ、そんなにひっつくなよ」
「愛情表現なのだ~♪」
臆面もなく好きだと言ってくるこいつらをみていたら、俺はまた目頭が熱くなってきた。
だけど、これはあの時の……
みんなが消えちまったと思って流した、悲観的な涙なんかじゃねぇ。
れっきとしたうれし涙ってやつだ。
封印されたどうしようもない箱のにくたらしいしゃべり方を思いだす。
けれど、憎しみの感情はさほど湧いてこなかった。
だって、アイツのおかげで、俺は大事なことに気づけたんだから。
なんでも叶う願い事なんかより、大切な存在(モノ)はすぐそばにあるって……ってな!
――以上で、俺の話は終わりだ。
どうだ、おもしろかったか?
何?
でも、疑問がひとつ残る?
俺がパンドラボックスに、何を願おうとしていたのか、気になるだと?
それはだな……
聞いて驚け。
「俺の欲しいと思うものが何でもでてくる箱をよこせ」だ。
どうだ、すごいだろう。
この願いのすごいところはだな。
ひとつのものに縛られないってことさ。
何しろ何でも出てくるんだからな。
うまく使えば、戦艦だろうが、お宝だろうが思いのままって寸法さ。
トレジャーハンターらしく、すごい財宝の眠る遺跡を出してもいいしな。
すばらしく夢があるだろう。
……って、まぁ、どのみち叶わなかったけどな。
でもいいさ。
この世のお宝はすべからく俺のもの。
自力で必ず手に入れてやるさ。
俺は欲しいものは奪い取る主義だからな!
おわり
■小説「ギャラクシーエンジェルII 絶対領域の扉0」発売記念サイン会開催!
残念ながらギャラクシーエンジェルIIの発売は延期になってしまったけれど、発売を待ち望むみなさんに朗報!シナリオコーディネイターである菜の花先生の小説が発売されるぞ!これを記念して4月の25日にはゲーマーズ本店で、30日には立川店で、菜の花先生のサイン会が行われることになりました!!詳しい参加条件は下記をご覧ください。
絶対領域の扉が開くまで、まだ後すこしあるけれど、それまでは小説を読んでじっくりGAIIの世界に浸って頂きたいっ!!
【商品名】 ギャラクシーエンジェルII 絶対領域の扉0
【著者】 菜の花すみれ
【発売日】 2006年4月25日(火)
【税込価格】 945円
【発行】 角川書店
【イベント概要】 菜の花すみれ先生サイン会
【開催日時】
ゲーマーズ本店 4月25日(火)18:00~
ゲーマーズ立川店 4月30日(日)17:00~
【チケット配布対象】 ゲーマーズ本店・立川店にて対象商品をお買い上げのお客様に、先着で参加チケットをプレゼント
【チケット配布開始日】 2006年4月25日(火)
【サイン対象物】
サインは対象商品に行いますので、必ずお持ちになって下さい。
当日お忘れの場合は、再度お買上げいただきます
作者プロフィール
菜の花すみれ/なのはな・すみれ
・『GALAXY ANGELⅡ~絶対領域への扉~』ではシナリオコーディネイターを担当。
・『クロスワールド~見知らぬ空のエターティア~』ではストーリー構成、シナリオ、小説、作詞を担当。
・エルシオール交響曲 ~アルモの恋の物語~
・小説『ギャラクシー・エンジェル烏丸ちとせのエンジェル隊業務月報』
・小説『妄想族』『続・妄想族』(現在プリンセスソフトのHPショートストーリー館にて掲載中)
・デコオンライン サイド小説「シオンの剣」
・モバイルブックサイト[どこでも読書]で、多数の現代小説を発表中。
・アニメ『モンチッチ』
など。
りうこ
幼少時のあだ名は、りこちゃんでした(名前負け)
現在、菜の花すみれ先生のサブとして、モバイルブックサイト[どこでも読書]で、『ミエ★パニック』を執筆中!」
©BROCCOLI Illust/Kanan
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