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2017/1/4(水)
年末(時には年始)に『みすず』の『読書アンケート』の原稿を書くのが恒例になっている。その年のあいだに読んだ本(別に新刊でなくてもよい)についてのおおよそ 800 字程度の紹介・感想を書く。それが書店に並ぶ『みすず』の 1, 2 月号に数多くの「文化人」の寄稿とともに掲載されるのだ。
で、今年も書いたわけだが、もっとも書きたい二つの作品について書いたところ、期せずして去年の寄稿の「つづき」的な文章になった。
というわけで、今年のをお読みいただく前に去年のをざっと読んでいただければと思う(去年の 1/27 の日記にも掲載したけど)。800 字程度という縛りのなかで、個人の体験をベースにしたインターネットの変遷論に埋め込んで二つの本を紹介するという無茶な試みでした。
「みすず」読書アンケート
2015 年に読んだ本(新、旧を問わない)から五冊以内について感想を述べよ。
(1) 岸政彦『断片的なものの社会学』(朝日出版社)
(2) おかざき真里『阿・吽 1〜3巻』(小学館)
ぼくにとって90年代初頭のインターネットは「掲示板の時代」だった。個性の強い主催者がそれぞれのスタイルの掲示板を運営し常連の論客が適度に開いた環境で多彩な議論を交わした。ぼく自身も東北大数学科の黒木玄さんの掲示板に出入りし多くを学び多くを語った。今も親交のある評論家・翻訳家(が副業)の山形浩生さんや文筆家・翻訳家のニキリンコさんと出会ったのもこの掲示板だ。
その頃よく見ていた掲示板の一つに面白い奴がいた。社会学の大学院生。短い(多くの場合くだらない)投稿が強い印象を与える。興味をもって彼の個人ページの文章を読んだ。内容はほとんど覚えていないが圧倒的な筆力から受けた驚きは忘れない。こんなすごい文章を書く奴がいるんだ。でも、これを読むのは一部の掲示板の常連だけだろう。天才的な文才の無駄使い・・
(1)は社会学者の岸政彦が聞き取りの現場で出会った断片的な物語を綴った書、「面白い奴」の近著だ。空き時間を紡ぐようにして一気に読んだ。「すぐ目の前に来たときに気付いたのだが、その老人は全裸だった。手に小さな風呂桶を持っていた。」うん。確かに彼の文章だ。小説のなかの本筋とは関係ないが書き込まれていて心に残る挿話だけを読むような快感。「解釈はしない」と宣言しながらも時には普遍化に流れる岸さんを見るのも一興だ。そしてなにより本書が話題の書となり彼の文章が広く読まれていることが素直にうれしい。
(2)は人気漫画家おかざき真里の連載中の作品。最澄と空海の物語である。未完の作品について語るのはフライングだろうが、漫画でこそ可能な表現で重厚な物語が綴られていく様は圧巻。絵も漫画というレベルを超えて美しく力強い。漫画から離れた大人にも自信を持って薦められる作品だ。
2016 年の今、ぼくにとって多くの人とネットで交流する場はツイッターに移っている。ツイッターでのぼくのアイコンは、なんと縁あって真里さんが描いてくれたぼくの似顔絵だ。巨大で流動的な人々の結びつきの中に140 字以内の短い投稿が次々と放流されていく環境には未だ馴染みきれないが、この混沌からどんな文化や出会いが生まれるか楽しみでもある。
さて、こうしてツイッターに話が移ったところで、一年後、今年の寄稿。
「みすず」読書アンケート
2016 年に読んだ本(新、旧を問わない)から五冊以内について感想を述べよ。
(1) 柞刈 湯葉『横浜駅 SF』(カドカワ BOOKS)
(2) 岸 政彦『ビニール傘』(『新潮』2016 年 9 月号)
横浜駅は「完成しない」のではなく「絶え間ない生成と分解を続ける定常状態こそが横浜駅の完成形であり、つまり横浜駅はひとつの生命体である」と何度言ったら
ツイッターは3億人以上が利用するインターネットのサービスだ。日々数億のツイート(百四十字以内のテクスト)が投稿される文字情報の混沌である。
ツイッターで「イスカリオテの湯葉」と名乗る生物学者と知り合った。軽い会話を交わす仲だが本名は知らない。冒頭は一昨年の正月の午後の彼のツイート。そして、十分後のツイートが続く。
西暦30XX年。度重なる工事の末にとうとう自己複製の能力を獲得した横浜駅はやがて本州を覆い尽くしていた。三浦半島でレジスタンス活動を続ける主人公は、謎の老人から託されたディスクを手に西へ向かう。「横浜駅16777216番出口(長野〜岐阜県境付近)へ行け、そこに全ての答えがある」
「『横浜駅SF』が始まった。ぜひ最後まで!」という(ぼくを含む)周囲の声援の中、その日のうちに一連のツイートからなるアドリブの作品が完成。ネット上で爆発的な話題を呼んだ。それから二年弱の後、web小説を経て本格的なSF小説が単行本(1)として刊行された。
大胆なネタを精緻なディテールで補強し商業的にも成功しうる作品を構成した力量は圧巻。凄まじい才能だ。成立経緯を見ていると後になって書かれた部分ほど彼独自のテーマが顔を出すように感じる。この人は三年後くらいまでにものすごい物を書くと予言しておこう。
(2)はやはりツイッター仲間である社会学者の岸政彦による短編小説。昨年のアンケートで彼の『断片的なものの社会学』を取り上げ「小説のなかの本筋とは関係ないが書き込まれていて心に残る挿話だけを読むような快感」と評したが、こんなにも早く彼の小説が読めるとは。大阪の街で暮らす人々の「断片」を絶妙に編み込んだ不思議で寂しい心に残る小説だ。
この岸さんのデビュー作は高く評価され芥川賞候補にもなっている(とツイッターで知った!)が、数多くの物語の断片を蓄えている岸さんの小説世界はこれからもっと広がり深まっていくはずだ。三年後くらいまでには芥川賞受賞作を生み出すと予言しておこう。
去年の読書アンケートについての日記(2016/1/27 の日記)では
ツイッターの混沌の中で出会った人たちの一人、唯一無比の才能をもったきわめて興味深い人物
として湯葉さんに触れ、『横浜駅 SF』にも言及している。まるで今年の読書アンケートを計画していたみたいな感じだが、あの時点では、まさか『横浜駅 SF』が書籍になるとは夢にも思っていなかったから、やっぱり「期せずして」というのは正しいのだ。
『横浜駅 SF』が生まれるところを(「騒いでいる群衆の先頭にいるおっさん」みたいな立場で)リアルタイムで目撃したことは 2015 年 1 月の日記に詳しく書いてある。ちょうど 2 年後の 1 月 4 日にこうして書籍版の感想文を公にするのもなんとも感慨深い(ま、ほんとはもう 4 日じゃないんだけど、いいでしょ)。
岸さんとぼくの関わりについては去年の 1/27 の日記にかなり詳しく書いた。去年、そういうちょっと不思議な関わりのある人を『読書アンケート』で取り上げるのもまた面白いなと思ったのだが、まさか、今年も続けて取り上げることになるとは。
こちらも、全く予期していなかった --- というか、驚きの展開だ。
上の『みすず』の記事は、湯葉さん、岸さん、それぞれについての大胆な予言で終わっている。これは別にウケをねらって書いたわけじゃない。一人の本好きとして彼らの作品と素直に向き合った結果、心の底からそう思っているのだ。たまたま少しの接点のあったお二人の生み出すものをこれからも静かに追いかけていきたいと思う。
人生、なかなか面白いものです。
2016年03月17日(木)
■著作権侵害の非親告罪化の流れ
この3月8日にTPPに関連した著作権法改正案が国会に提出された節目の機会なので、2006年〜現在までの著作権侵害の非親告罪化の流れを表にまとめた。なお、これについては、福井健策弁護士の下記のまとめも必読である。
・(これでも)超高速! TPP著作権問題の経緯と展望
・超ざっくり! TPP著作権問題の現在地点
<TPP以前>
年月 できごと
2006年11月 知的財産戦略本部・知的創造サイクル専門調査会が、海賊版対策として著作権侵害の非親告罪化を提言
2006年12月 アメリカから日本に対する年次改革要望書に「非親告罪化」が盛り込まれる
2007年5月 「知的財産計画推進計画2007」でも、海賊版対策として「親告罪を見直す」と記述
2007年6月 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会にて、法務省・警察庁ともに「著作権侵害が親告罪であることで捜査実務に支障はほとんどない」と発言(非親告罪についても権利者の意思の確認・協力が不可欠)
2007年10月 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会・中間報告「著作権等の侵害罪についての親告罪の範囲の見直しについては、著作権等侵害行為の多様性や人格的利益との関係を踏まえると、一律に非親告罪化してしまうことは適当ではない。なお、例えば現行の犯罪類型のうち一部を新たな犯罪類型としてそれのみを非親告罪化するとの考え方もあるが、そのような要件設定が立法技術上可能かどうかという点や、非親告罪とした場合の社会的な影響を見極めることも必要であり、慎重に検討することが適当である」
2008年6月 「知的財産計画推進計画2008」で「親告罪を見直す」表記なくなる
<TPP交渉の非親告罪化の流れ>
年月 できごと
2011年2月 TPP知財条項案(米国提案)が流出。「非親告罪化」が提案されていることが発覚(TPPは秘密交渉ゆえ交渉経緯・文章が発表されない…以後も同様)
2012年度 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会にパロディワーキングチーム設置・検討。パロディの法制化は敢えて行わず
2012年6月 日本マンガ学会第12回大会シンポジウム「二次創作の可能性と課題」
2012年12月 thinkTPPIP(TPPの知的財産権と協議の透明化を考えるフォーラム)発足
2013年3月 第8回コンテンツ流通促進シンポジウム「著作物の公開利用ルールの未来」にて、赤松健氏「黙認マーク」提唱
2013年3月 パロディワーキングチーム報告書公開
2013年6月 シンポジウム日本はTPPをどう交渉すべきか 〜「死後70年」「非親告罪化」は文化を豊かに、経済を強靭にするのか?」
2013年7月 日本が正式にTPP交渉参加
2013年7月 政府TPP対策本部がパブリックコメント募集。コミックマーケット準備会もこれに応募(2015年3月に公開)
2013年8月 コモンスフィアと赤松健氏「同人マーク」運用開始
2013年11月 ウィキリークスによるTPP条文流出。非親告罪化には日本とベトナムのみが反対。「商業的規模の著作権・商標権侵害」が対象という制約条項あり
2014年6月 参議院決算委員会、甘利TPP担当大臣「一律にみんな非親告罪にしてしまえというというような議論はですね、あまり良くないなと、いうようなところからですね、共通ルールにしていくかということを今交渉している最中であります」と答弁(山田太郎議員質問)
2014年10月 ウィキリークスによる条文流出。「権利者の市場での活動に影響を与える場合に限る」との制限を日本が提案
2015年2月 thinkTPPIP緊急声明案発表。全国同人誌即売会連絡会、コミックマーケット準備会もこれに賛意
2015年3月 「TPP協定交渉について」コミックマーケット準備会発表
2015年3月 参議院予算委員会、宮沢経済産業大臣「全面的に著作権侵害が非親告罪化されるとなると、コミックマーケット等の参加者に、影響なしとは言えないという気がいたします」と答弁(山田太郎議員質問)
2015年5月 政府TPP説明会、渋谷審議官「コミケ文化などが影響を及ぶと大きな関心事項になっている」 「何の注釈もない非親告罪化で決まり、ということになると、どういう反応になるかというのは、私どもは熟知して交渉しているつもりですので、何とかそこは皆さんのご理解が得られるような方向でまとめたい」と発言
2015年8月 参議院予算委員会、安倍総理「TPP交渉における著作権侵害の非親告罪化については、二次創作の萎縮などの懸念も踏まえ、権利保護と利用促進とのバランスを取りながら、共通ルールの構築を目指し、交渉に当たっております」と答弁(山田太郎議員質問)
2015年8月 thinkTPPIPとコミックマーケット準備会共催によるトークイベントTPPの著作権条項を考える〜非親告罪化、保護期間延長、そして法定賠償金〜」をコミックマーケット88会場にて開催
<TPP大筋合意後>
年月 できごと
2015年10月 TPP大筋合意「故意による商業的規模の著作物の違法な複製等を非親告罪とする。ただし、市場における原著作物等の収益性に大きな影響を与えない場合はこの限りではない」
2015年10月 マンガ・アニメ・ゲームに関する議員連盟ヒアリング。非親告罪化について、福井健策弁護士、玉井克也東大教授、金子敏哉明大准教授、赤松健氏、コミックマーケット準備会が意見を述べる。
2015年10月 日経新聞「春秋」が非親告罪化をテーマとする。
2015年11月 文化審議会著作権分科会基本・法制問題小委員会にて権利者側・利用者側の関連団体ヒアリング。コミックマーケット準備会も参加。全団体が非親告罪化の慎重な法制化を求める。日本書籍出版協会「一部非親告罪化についてですが、我々出版社はこれまで表立ってコミックマーケットについてコメントしてまいりませんでした。しかしながら、コミックマーケット、コミケというのは,我が国が世界に誇るコンテンツのゆりかごの役割を果たしていると認識しております。是非ともこうした文化を守り育てる方向での制度改正をお願いしたいと思います」
2015年11月 文化審議会著作権分科会基本・法制問題小委員会「著作権等侵害の一部非親告罪化については、TPP協定において非親告罪化が義務づけられている範囲及び趣旨を踏まえつつ、我が国の二次創作文化への影響に十分配慮し、適切に非親告罪の範囲を定めること」
2015年11月 産経新聞社説「TPPと著作権 創作意欲妨げぬ仕組みを」
2015年11月 日経新聞社説創作促す著作権の仕組みを」
2015年11月 知的財産戦略本部。「著作権法の改正については、権利の保護と利用のバランスに留意し、特に、著作権等侵害罪の一部非親告罪化については、二次創作への委縮効果等を生じないよう、その対象となる範囲を適切に限定するものとする」。会議の席上安倍首相、島尻知的財産戦略担当大臣、馳文部科学大臣が「著作権に関して二次創作が萎縮しないように」と発言
2016年1月 読売新聞社説「TPPと著作権 保護強化で創作意欲守りたい」
2016年2月 毎日新聞社説「TPPと著作権 文化の利用にも配慮を」
2016年2月 文化審議会著作権分科会基本・法制問題小委員会にて「環太平洋パートナーシップ(TPP)協定に伴う制度整備の在り方等に関する報告書」了承
2016年2月 文化審議会著作権分科会にて「環太平洋パートナーシップ(TPP)協定に伴う制度整備の在り方等に関する報告書」了承
2016年2月 自民党政務調査会・文部科学部会にて、環太平洋パートナーシップ締結に伴う関係法律の整備に関する法律案の著作権法関係の条文について了承
2016年3月 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案」国会提出
同人誌の売り上げには税金がかかることを-申告をし、納税をしなければ税務署から処罰を受けることがあります。
HTTP Basic: Access denied.
2011.08.13
ごめんね…今年は夏コミは出ないんだ…ごめんね…
仕事色々片付けたらまた出すつもりなのでもうちょっと待っててね…
話変わって、今月発売の「アイデア」最新号に軽いインタビュー&最近のお仕事を載せていただきました(バルコロニー名義)。わーい。
IDEA No.348 : 漫画・アニメ・ライトノベルのデザイン EXTRA
見本誌頂いて読んでいたのですが、中で度々「同時代のデザイン」という言葉が出てきまして個人的にアレコレ共感のある言葉でした。過去にデザインとして「語られるべき」とされてきたものから距離をとって、現代という時代の中で行われているデザインの等身大の営みってなんぞ、を捉え直した時に見えてきた風景のひとつが、このアイデアの漫画・オタク系デザインの三度にまたがる特集なのかもしれないな〜と。色々と考えさせられる特集でしたので、装丁資料としてのお買い求め以外の用途として、モダンデザイン以降のデザインを探るきっかけとしても是非。このへんの話もいずれどこかでできれば。
それとイベントでの人気作品については、sk2さんの一人勝ちでしたねw