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2024-11-22
背筋が寒くなるような北欧産社会派ミステリ『地下道の少女』
BOOK 北欧ミステリ
地下道の少女 / アンデシュ・ルースルンド (著), ベリエ・ヘルストレム (著), ヘレンハルメ美穂 (翻訳)
強い寒波に震える真冬のストックホルム。バスに乗せられた外国人の子ども43人が、警察本部の近くで置き去りにされる事件が発生した。さらに病院の地下通路では、顔の肉を何カ所も抉られた女性の死体が発見された。グレーンス警部たちはふたつの事件を追い始める。難航する捜査の果てに、やがて浮かび上がる、想像を絶する真実とは? 地下道での生活を強いられる人々の悲劇を鮮烈に描く衝撃作。
謎のバスに乗せられ、薬物で朦朧となった43人の子供たちが真冬のストックホルムに置き去りにされる。その後の捜査により、近隣諸国でも同様の置き去り事件が発生し、その数は何と194人にのぼった。子供たちはいったい誰でどこからやってきたのか?子供たちを投棄したのはいったい何者なのか?そもそもなぜこのようなことが起きなければならかったのか?
一方、ストックホルムの病院地下で体中めった刺しにされ顔の肉を抉られた女性の死体が発見される。捜査の過程で浮かび上がってきたのは、街の地下を縦横に走る地下道に暮らす浮浪者たちの姿だった。死体と浮浪者たちとはどう関係しているのか?そして今、街の中心部にある教会に一人の薄汚れた少女が訪れ、礼拝堂の席に放心したまま座り続けていた。彼女はいったい誰なのか、いったい何があったのか?
スウェーデンの作家コンビ、アンデシュ・ルースルンドと ベリエ・ヘルストレムによる社会派ミステリ『地下道の少女』は、こうしたあまりに謎めいた、そして不気味な冒頭部から展開してゆく作品だ。そしてそこには、福祉社会として名高いスウェーデンの誰も目を向けようとしない深い闇、かつて独裁国家として知られたある国の暗部が存在していたのだ。その二つに共通するのは「地下世界」である。
物語は多くの部分で現実の出来事を基に形作られている。作者はストックホルムの地下世界に暮らす人々に徹底したリサーチを行い、また地下世界が網の目のように繋がっているものであることも真実なのだという。子供たちの置き去り事件にしても現実にあったことなのだ。作者はこれらの社会問題と国際的事件を「殺人事件」というフィクションを中心にして再構成し背筋の凍るような物語として完成させたのだ。
重々しく救いのない物語ではあるが、同時にどこか荘厳な雰囲気を感じさせる作品でもある。地下世界という名の現実世界と遊離したもう一つの世界、そこである種のアンタッチャブルとして、あるいは見えない存在として生きる人々の形作る社会。あるいは壮大な神隠しのように現れてはまた消えてゆく子供たち。その非現実感と異様さがそう感じさせるのだろう。しかしこれは紛う事なき現実
ピーター・フォークに敬意を… ピーター・フォークが亡く...
アガタ・ボニツェールが女教皇ヨハンナに 女性ながらも9世紀にロー...
2024-11-18
ドぴあ(827)2024/11/18~11/24
2024年11月24日号(通巻827号)
表紙:ルーシァン・キャスティーヌ=テイラーさん(左)
ヴェレナ・パラヴェルさん(右)
(『リヴァイアサン 』2012、『カニバ』2017)
11月22日公開『人体の構造について』
https://transformer.co.jp/m/jintai
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shimizu4310 2024-11-18 00:00 読者になる
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ドぴあ(827)2024/11/18~11/24
2024-11-19
冤罪と死刑について考えさせる『黒い司法 0%からの奇跡』
告知 映画
早くも師走感が漂ってきた中、この一ヶ月ほどやたらと忙しく、ここの更新も遅れてしまいました。公私共にいろんな案件が同時多発で‥‥映画をチェックしてる暇もなく‥‥。
ところで映画ってなんであんなに長いんでしょうか。一時間くらいで十分だと思いますけど。特にハリウッド映画とかね。きっと、金と時間をかけないとならないシステムが出来上がっているんでしょうね。
さて、連載「映画は世界を映してる」、今回は先月の袴田巌さんの無罪獲得の話題を枕に、死刑囚と若い弁護士の再審までの遠い道のりを描いた『黒い司法 0%からの奇跡』を取り上げてます。
forbesjapan.com
実話を元に、冤罪や死刑制度について考えさせる佳作。演出が引き締まった感じでダレるところがまったくなく、結末がわかっていても最後まで引き込まれます。
黒人差別と闘った弁護士を描いた往年の名作『アラバマ物語』を観ていると、もっとこの映画の芯がわかると思います。
そして、俳優陣が皆いいです! エンドロールに演じられた実在の本人たちの当時の画像が出てきて、なるほど、この人をあの俳優が演じたのかと感心することしきりでした。
次回は年明けになるかもしれませんが、連載の告知以外の記事が出ると思います。
ohnosakiko 2024-11-19 20:20 読者になる
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冤罪と死刑について考えさせる『黒い司法 0%からの奇跡』
2024 / 11
2024-11-18
『本心』『箱男』『シン・仮面ライダー』
本心 (文春文庫 ひ 19-4)
作者:平野 啓一郎
文藝春秋
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平野啓一郎『本心』では、主人公が他人の行為を代行するリアル・アバターを職業とする一方、死んだ母を拡張現実の映像&音声で蘇らせ、仮想空間に出入りする。彼はリアル・アバターとして自分の行動を依頼者から監視される一方、自身は現実にはない世
界を覗きこんでいる。
同作は映画化されたが、やはり今年映画化された安部公房の代表作『箱男』を連想させるところがあった。箱男は、段ボールをかぶって都市風景にまぎれつつ、自身の姿は見られないまま外を覗こうとする。段ボールによって彼に匿名性がもたらされる。
一方、『本心』の世界において、リアル・アバターの代行という立場は他人をかぶるようなものだし、その他人の目から逃れられない。だが、仮想空間にアクセスする際には、自分の姿を偽れるし、いわば虚構をかぶれるのだ。なにかをかぶること、視線といった『箱男』の要素が、様々な技術の発達によってヴァージョン・アップされている。
箱男(新潮文庫)
作者:安部公房
新潮社
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また、映画『本心』の主演が池松壮亮だったことは、やはり彼が主演した『シン・仮面ライダー』も連想させた。青年は素顔が隠れる仮面とともに強靭な力を得たことで別人のような行動をとれるようになるが、紆余曲折の末、ほかの人間の意識も彼と同居することになる。他人に行動を把握されるその状態は、リアル・アバターに近い。その設定は、『仮面ライダー』シリーズの出発点である石森章太郎の同名原作漫画を踏襲したものだ(「石ノ森」に改名する前に書かれている)。
シン・仮面ライダー[通常版] [Blu-ray]
池松壮亮、浜辺美波、柄本佑
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『仮面ライダー』、『箱男』、『本心』と、私が順に興味を持った三作には、共通性があったらしい。このことについては、いずれあらためて書いてみたい。
最近の自分の仕事
-平野啓一郎が描く近未来の姿――『本心』映画版と原作が問いかける、急速な“近”未来のリアリティ
https://realsound.jp/book/2024/11/post-1842792.html
ending 2024-11-18 08:43 読者になる
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2024-11-17
『人間の証明』と『限りなく透明に近いブルー』
先日、町田市民文学館の「森村誠一展」に行ったけど、しばらくして彼の『人間の証明』と村上龍『限りなく透明に近いブルー』が、どちらも1976年刊行なのをこれまで意識していなかったことに気づいた。
『人間の証明』は敗戦後間もなくの日本人と進駐軍の黒人兵とのかかわり、『限りなく透明に近いブルー』はベトナム戦争中の在日米軍の黒人兵と日本の若者との乱交パーティが物語のポイント
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kiki:「サンクチュアリ -聖域-」)
ルビー:「サンクチュアリ -聖域-」)
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最終更新日 2020年12月25日
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2018年映画ベスト10
映画秘宝2019年3月号が発売になりましたんで、2018年の映画ベストを転載させていただきます。
2 『ブリグズビー・ベア』(2017 デイヴ・マッケイ)
3 『パディントン2』(2017 ポール・キング)
4 『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017 ギジェルモ・デル=トロ)
5 『覗かれる人妻 シュレーディンガーの女』(2018 城定秀夫)
6 『Dimension』(1991-7 ラース・フォン・トリアー)
7 『快楽の漸進的横滑り』(1974 アラン・ロブ=グリエ)
8 『レディ・プレイヤー・ワン』(2018 スティーブン・スピルバーグ)
9 『ボトロップの120日』(1997 クリストフ・シュリンゲンジーフ)
10『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』(2018 パノス・コスマトス)
去年は城定監督で何を選ぶかというのが頭のひねりどころだったかと思いますが、ここはあえて『恋の豚』をはずしてこれ。狙いすぎですね。トホホ、コメントその他は本誌をどうぞ。なぜこれが一位なのかという話も含め、冒頭で町山と対談しております。対談の中で高橋洋さんの名前を出してしまってますが、これぼくの勝手な思い込みですんで、高橋洋さん(本人)にはなんの関係もありません。お詫びして、すべての責任はわたくしにあることを言明しておきます。
本連載は『祝祭の日々』(国書刊行会)として発売されました!
本ウェブページ、高崎俊夫の「映画アットランダム」は、すでに連載終了しております。
加筆修正され、国書刊行会から『祝祭の日々: 私の映画アトランダム』として2018年2月27日に発売されました。
このウェブには、未掲載分20本を残しております。
『映画評論』時代の長部日出雄をめぐって
前回、優れた『私が棄てた女』論をものした映画批評家・蒼井一郎について書きながら、私は、もう一人、浦山桐郎の最も深い理解者であった同時代の映画批評家がいたことを思い出した。長部日出雄である。
直木賞作家の長部日出雄が、かつてきわめてジャーナリスティックなセンス溢れる映画批評家であったことはつとに知られている。『週刊読売』の記者時代に、大島渚らが一斉に登場した際に、「松竹ヌーヴェル・ヴァーグ」と命名したことはあまりに有名なエピソードだ。
長部日出雄は、今も『オール讀物』に「紙ヒコーキ通信」を連載中である。この「紙ヒコーキ通信」は、劇場で見たばかりの新作映画をとりあげた時評で、これまで『映画は世界語』『映画監督になる方法』『映画は夢の祭り』(すべて文藝春秋)という三冊の単行本になっているし、昨年は、ライフワークともいうべき『新編 天才監督 木下恵介』(論創社)も上梓している。
とりわけ、私は、虫明亜呂無ほか物故した映画人のメモワールを収めた『振り子通信』正続、『精神の柔軟体操』(すべて津軽書房)などのエッセイ集を愛読している。
長部さんは、映画好きが嵩じて、自らの原作・脚本で『夢の祭り』(89)という映画まで監督してしまったが、作家に転身して以降は、作り手の視点に寄り添うようになり、かつてのような鋭い批判的な言辞は一切、封印してしまったように思う。そこが、私は少し不満でもあった。
というのも、かつて佐藤忠男が編集長を務め、虫明亜呂無、品田雄吉が編集者だった一九六〇年代半ばの『映画評論』に長部日出雄さんが発表していた映画評論は、辛辣な批評精神と同時代をリアルにとらえる鋭敏で柔軟な志向性が融合した独特の魅力を放っていたからである。
この時代の長部日出雄の批評で出色なのは、たとえば、「『裏切りの季節』―この汚辱にまみれた旗」(『映画評論』1966年8月号)である。冒頭の一節を引いてみよう。
「混沌とした映画である。が、これは新人がひさびさに、既成のモラルでない、それだけに不定型な自己の内部の観念を思うさまフィルムの上にぶちまけた作品だ。」
こんなぐあいに、悠然たるタッチで大和屋竺の鮮烈なデビュー作『裏切りの季節』を論じながら、当時、勃興していた三百万でつくられるエロダクション映画の可能性を見出している。
長部日出雄の生涯のベスト・ワンはフェリーニの『81/2』である。長部の「フェリーニの『81/2』」(『映画評論』1965年5月号)